<光母子殺害>元少年揺れる胸中…差し戻し上告審判決前に

いつまで立っても風化することはないであろうこの事件。
山口県光市の母子殺害事件で殺人や強姦致死罪などに問われた、
当時18歳の元少年が、20日の差し戻し上告審判決を前にして、
広島拘置所毎日新聞記者の面会に応じたということだ。
「事件の真相を認めてもらった上で、厳しいものであれば受け入れたい」
とした一方、「厳しい刑罰こそ望むが、死はそこで途絶えてしまう」
とも語り、自分自身では制御できない、
生と死の間で揺れる複雑な胸の内を明かしたという。

狭い接見室を隔てるアクリル板の向こう側に、
黒のタートルネックに灰色の上着姿で元少年が接見に現れた。
「なるべく努めて、落ち着いて臨もうと思っています」。
00年の1審から数えて5度目となる判決を待つ状態はかなりの苦痛だろう。
差し戻し審において殺意を否認した元少年は、
「検察の主張は事実と異なっている。
証拠をきちんと見て判決を下してほしい」と訴えたという。
検察のあり方が問題となっており、
争点は検察の証拠の正当性にかかってくるだろう。

記者が元少年の姿を見るのは、
差し戻し控訴審の死刑判決以来4年ぶりということだった。
肩幅は広くなり、がっしりした体格で健康状態は良好のよう。
また、髪は短く刈り、ひげを生やしていたという。
事件時は細身だったが、今は頬骨も張り、たくましさも感じさせるという。
長い年月が少年の体を成長させたのだろうが、人を殺した人間が、
何の罪もなく生活困窮している人に比べていい生活が送れるというのは、
正直納得できるものではない。基本的人権は全ての人にあるのである。

「端的に言えば、悲しかった」。
4年前、死刑を言い渡された判決の瞬間をそう振り返る。
「僕1人の命では、亡くなった2人の命を償えない。
未来を取り戻すことはできない」と思うからだ。
臓器移植のドナー登録に触れて、
「1人の命でも、複数の人の命をつなぐことができる」とも話し、
「命をなくす死刑には反対」と続けた。
昨今、死刑廃止論が高まっているが、
そのことを弁護士から入れ知恵されたのか?
少なくとも元少年死刑廃止論を論理建てて話すことはありえないと思う。

差し戻し審の法廷では、遺族の本村洋さんと向かい合える自分を目指したい、
と述べた。しかし、遺族の本村さんが冷静に向かい合うとは思えない。
この発言だけでも、自分の罪の重さをわかってない証拠だと思う。
思いは変わらないといい、
「等身大の僕を分かってほしい。それでも極刑を望むなら、
裁判所に言われるより受け入れられる」と話すが、詭弁であろう。
だが「どういうことが償いになるのか教えてほしい」
「模索することも反省の一つ」とも言う。
法廷で述べた「見つかっていない」状態から抜け出せない迷いも伝わる。
他人の大切な家族を殺害しておきながら、反省とはあまりに滑稽な言葉。

本村さんに謝罪の手紙を送った時期もあったが、
「手紙には、受け取り手がいますから」といい、送るのを控えている。
それは、本村さんがかつて記者会見で、
「手紙は開封していない」と明かしたからであろう。
今は母子の月命日、支援者の手を借り、事件現場に花を供えているという。
この行為自体心からのものであればそれなりに評価できる行為。
ただ、計算高く、判決に対する計算高いものである可能性もある。
支援者というが、一体この残虐な事件の犯人の何を支援するのか?
私には不思議でならない。

接見は約15分間、表情は落ち着き、時折笑顔も見せながら早口が続いた。
拘置所の単独室では本を多く読み、筋力づくりにも励んでいるという。
東日本大震災拘置所のラジオ放送で知ったらしい。
支援者と相談して、福島の子どもたちに放射線測定器を贈るための、
募金に協力した。このことも裁判での心象をよくするための、
支援者なる人の入れ知恵としか思えないが。
関係者によると、家族の面会は、長い間途絶えているという。