津波避難ビル急増…全国で6000棟前後か

東日本大震災からまもなく1年を迎える。
東日本大震災後から、沿岸部の住民が津波から一時的に避難するための、
津波避難ビル」を指定する自治体が増加している。

国土交通省など関係団体が全国の沿岸610市区町村を対象に調査した結果、
昨年6月で1876棟、同10月では3986棟という結果で、
調査担当者は「現在は6000棟前後に増えている可能性もある」という。
ただし、沿岸部に高層の建物がない場合や、
仮にあっても耐震性が満足できないなど、頭を痛める自治体も多いのが現状だ。

千葉県鴨川市を例にとると震災前に1棟だった津波避難ビルを、
昨年5月までになんと41棟にも増やした。
沿岸部のマンション等の建物から指定の承諾を得たのだが、
耐震基準を満たしているのは23棟であった。
市の指定条件は3階建て以上の鉄筋コンクリート製他だが、
耐震性は条件になっていないのである。
静岡県伊東市においても指定する27棟のうちで、
耐震性を満たしているのは半数以下の11棟。
市は今後、40棟近くまで増やす予定だという。

上記両市は海水浴場などを抱えており、多くの観光客も訪れる場所。
国は指定について「耐震改修などを済ませた施設に」としているが、
市の担当者は「命を救うため多くの施設を確保したい」、
「高層の建物は限られており、了解を得られれば指定せざるを得ない」と言う。

そして、高層の建物が沿岸部にない地域もある。
三重県紀宝町津波避難ビル4棟あるが2階建てが3棟で、
3階建ては役場だけという状態だ。
担当者は「周辺にめぼしい建物がなく、有効な解決策が見つからない」と、
頭を悩ませている状況だ。

そのような中にあって、静岡県御前崎市は昨年から、
津波避難タワーの建設に着手、5日に完成式典を行なった。
高さ12メートルの鉄骨製で、100人が避難可能である。
総事業費は約3370万円。住民や観光客らの利用を想定しているという。
焼津市も今月に、沿岸部に緊急避難用の津波避難タワー5基の建設に着手する。
また、沼津市は新年度、緊急避難が可能な高台公園などを作る調査を始める。