図書館「次のお薦め」波紋…読書履歴は個人情報

個人的には図書館の利用はほとんどないのですが、
ここまで景気が悪くなってくると無駄に本も買えません。
その点やはり図書館は便利ですね。
まあ、借りたあと返しに行く面倒と読むペースが少々強制されるのが嫌ですが。

そんな中、図書館の貸し出し履歴をレンタルソフト店「TSUTAYA」の、
運営会社に託して活用しようという、佐賀県武雄市の構想が波紋を呼んでいる。
これに関しては市の予算を少しでも節約しようとしているのか、
はたまた人的ミスや作業の簡略化なのかわからないが、
余りにもお役所らしいと言えば言えるわけで、
面倒は業者に丸投げって感じですね。

履歴情報は、利用者に推薦本を紹介するリコメンドに使われるほか、
運営会社の市場調査に利用される可能性もある。
図書の貸し出し履歴は思想信条に関わる個人情報で、
これまでは「履歴は消す」が原則だった。
だが、IT技術の向上で情報分析が容易になる中、
履歴活用に踏み出す図書館は増えつつある。

思想信条の自由に関しては知っても踏み込まなければよいのだが、
その傾向を知って不都合と思えば、
その種類の本を図書館に入れないことが出来る。
また貸出履歴については「TSUTAYA」のリストとすることができ、
店舗においてその嗜好の高い音楽CDや動画DVDを揃えることもできる。
レンタルショップとしては一歩も二歩も抜きん出るだろう。

武雄市が市立図書館の運営をTSUTAYAを展開する、
カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)」に委託するのは、
来年4月からとなっている。
従来の図書館登録カードをCCCの共通ポイントカード、
「Tカード」に置き換え、Tカードのもつ機能は、
原則利用できるようにする計画だ。
例えば、本を1冊借りるごとに1円分のポイントが付与され、
提携するコンビニなど小売店4万6000店で交換できる。
ポイントサービス性というのもいかにも現代的サービスという感じ。
そしてICカードの導入でICチップが入れられるわけだが、
その内容は図書館利用者には見ることができない。
完全に官と財のみの資産となるわけで悪用される可能性は大きい。
つまり憲法最高裁判例で言うところの「プライバシー権」を、
犯される可能性が高いということである。

「あなたにはこんな本がお薦めです」などと、過去の貸し出し情報などから、
各人の関心にぴったりの本を薦めるリコメンドも、目玉サービスの一つだ。
アマゾンでは既にこのサービスは一般化してますけどね。

ただ、リコメンドするには貸し出し履歴をCCCが蓄積して、
分析する必要がある。
さらに、履歴を匿名化した上で提携の小売店に提供し、
市場調査に活用することも検討されている。
この部分の匿名化についての確認期間はどうするのだろう。
市や業者の確認では誰も納得しない。
三者機関を作るしかないが、また、出費が増えるだけで本末転倒。

こうした履歴の活用は、図書館では長年タブーとされてきた。
全国の図書館2357館が加盟する日本図書館協会の、
図書館の自由に関する宣言」(1979年改訂)では、
「何を読むかはその人のプライバシー」と定め、
ほとんどの図書館では本の返却後すぐ履歴を消去してきた。
国立国会図書館の場合、閲覧・複写の申請データを1か月後に消去する。
馬鹿なマスコミが知る権利とか報道の自由とか言って、
他人のプライバシーをないがしろにしている現在、
またプライバシー権を犯そうとする仕組みを作ろうというのか。
官は自らを楽にするためには上から目線で好き勝ってやる禍々しいものだ。